毒を持つ娘と、毒を食う獣魔王 ~偽りの愛と復讐劇~
 見上げるほどに大きな城門を通って、そのまま突き進むアレンの背中を追いかけて歩く。よく考えたら罪人が堂々と正門から入る事自体がおかしい。

 やがて、花や草がモチーフの装飾が目を引く銀色の扉の前に辿り着いた。この先に王がいるのだと雰囲気で分かる。

「……国王陛下の部屋だ。入れ」

 アレンが扉を開けると、リィラに一人で入るようにと促す。
 アディール国王という事はセンティの父親だ。どんな顔をして会えばいいのか分からない。

 ただ、自分がセンティを殺してしまった罪は事実。どんな罰が待っていようと、リィラは裁きを受ける覚悟を決めた。
 しかし、なぜ『自室』に通されるのだろうか。疑問に思いながらもリィラは恐る恐る室内へと歩を進める。

 真っ赤な絨毯の上を歩くと、その先には真っ黒なソファに座る人物の姿が見えた。

(え……?)

 その人物の姿を捉えた瞬間に、リィラの心臓が大きく跳ねる。呼吸も瞬きも忘れるほどに、紫の瞳は『彼』の姿だけを捉える。

 銀色の髪と、優しい眼差しと甘い口元。黒のウエストコートの中にグレーのシャツで、3人掛けほどの大きな黒いソファの真ん中に堂々と背中を埋めている。
 リィラが正面から一歩一歩近付く度に、その面影は現実のものとなる。

「……センティ!!」

 目の前の男の姿は、間違いなくセンティだった。魔物に食われて死んだと思われていたが、生きていた。

 リィラは衝動的に駆け寄ろうとしたが、自分を見つめるセンティの瞳に気付いた瞬間に足を止めた。
 センティの瞳は血のように赤い色。青空のような澄んだスカイブルーではなかった。

「センティ……? 本当にセンティ……なの……?」

 震える声で問いかけるリィラを見上げるセンティの赤い瞳は冷たく、感情の欠片も見えない。

「あぁ、オレはセンティという名だったな」

 その声も間違いなくセンティのものだが、その言葉の意味が分からない。
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