冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「それにある意味、正論だったからな」

 いつもの棘のある口調ではなく、どこか腑に落ちている言い方だった。

「相手は変えられない。言われたくないなら、こちらが改めるか離れるしかない」

 私が一方的に放った言葉が、そんなふうに受け止められるとは思ってもみなかった。というより、その選択肢なら……。

「てっきり離れる方を選ぶと思いました」

 正直に告げる。三神さんなら間違いなく拒絶を選ぶと思っていたのに、まさか契約続行を言い渡されるなんて。

「そうした方が楽だとは思ったが……」

 私の指摘に言い淀みつつ、こちらを見た三神さんと目が合う。心臓が跳ね、勝手に鼓動が速くなるのを顔には出さないように続きを待った。

「猫の手以下でも、ないよりはマシだと思ったんだ」

 しかし面倒くさそうに続けられ、つい噛みつく。

「な、なんですか、それは!」

 それはほぼ役に立っていないという認識なのでは?

「浩明の手前もある。そもそも俺なら仕事でもない限り、他人に干渉することはしない」

 少しは歩み寄れたのかと思ったが、やっぱり三神さんは三神さんだ。

 呆れるやら納得するやらで、自然と事情が口を衝いて出る。

「私、幼い頃に父を、中学の頃に母を病気で亡くしているんです。母は、私の進学や生活のために睡眠時間を削って仕事を掛け持ちして働いていました。そんな母が倒れて病院で診断を受けたら、進行性がんで……そこから一ヶ月もしないうちに亡くなったんです。あんな無理な生活をしていなければ、もっと早く病院に行っていたらって………だから私、三神さんと母を重ねて、思わずあんな物言いをしてしまったんです」

 そこで我に返り口を噤む。こんな言い訳めいた個人的な事情を長々と話してどうなるのか。
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