冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
「す、すみません。お医者さんってスーツというか、なんかきっちりしたイメージが勝手にあったので……」

「専門や病院によってスーツに白衣を着る医者も一定数いるが、俺は出勤後に着替えるから通勤は私服なんだ」

 面倒くさそうに説明され、納得する。思い込みはだめだと反省しつつさらに尋ねる。

「ちなみに専門はどちらなんですか?」

「心臓外科。主に小児を担当している」

 あまり身近ではない分、難しい印象が先立つ。心臓は生命を維持するかけがえのない臓器だ。

 目をぱちくりとさせている私に、三神さんは訝しげに尋ねてくる。

「聞いてなかったのか?」

 誰に、というのは考える間でもない。浩明さんを指しているのだろう。私は軽く頷いた。

「生活スタイルを把握するうえで職業を知る必要はあったかもしれませんが、浩明さんもなにもおっしゃらないので、私からあえて……」

 わざわざ尋ねる真似はしなかった。

「珍しいな」

 それはどういう意味なのか。少なくとも褒められている気はしない。

「そこまで三神さん自身に興味がなかったんです」

 軽口を叩き、ふいっと顔を逸らす。自分のことにはまるで触れるなといわんばかりの態度だったくせに。

 とはいえ、失礼な物言いだった?

 ちらりと彼をうかがうと信じられない光景が目に飛び込んできた。

 ずっと厳しい表情を崩さなかった三神さんが、口元を押さえくっくっと笑いをかみ殺している。

「なるほど」

 一体、なにに納得したのか。そんな疑問が心の中で浮かびながらも口にしなかったのは、もう少し彼を見ていたいと無意識に思ってしまったからだ。
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