冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 三神さんは再び、自室へこもってしまった。今日はオンラインで研究報告会があるらしい。

 なにも変わらないと思ったけれど、本は名前、資料は日付順にまとめるよう指示があったので、私を継続して雇うという彼の意思は本当らしい。少しだけ認められた気がして嬉しくなる。

 それにしても、こんなにも勉強もしないとならないなんて、お医者さんは病院に勤めるだけが仕事ではないんだ。

 私物を見るのも失礼だと思ってあまり目を向けていなかったが、仕分けするため確認していると、本や資料は心臓や医学に関するものばかりだ。英語で書かれた論文らしきものもあり、ノートには図付きで細かく貴重面な文字でいろいろと書き込まれている。

 睡眠や食事を削るのは賛成できないけれど、三神さんが常に最新の手術技法や治療について学ぼうとしているのは、わかった。

 食事はどうしよう? とくになにも言われていないけれど……。

 この仕事を引き受ける際、浩明さんからクレジットカードを渡されて、食費含め必要なものはこれで購入するようにと言われていた。使ったら都度報告しているが、今のところほぼ無駄になってしまっている。

 三神さんが食べられるものってなんだろう。さすがにまったく食べずにいるわけではないよね。

 根本的に他人が……私が用意するものを受け付けないなら、せめて三神さん自身で食べられるものを冷蔵庫にストックするくらいはしたい。

 キッチンで頭を抱えているとリビングのドアが開く。

「おつかれさまです」

「ああ」

 短く返した三神さんはいつも通り眉ひとつ動かさない。やはり先ほど見た表情は夢か幻だったのかも。しかし疲労感が滲みながらも、なんとなく機嫌がいい気がするのは、彼にとって有益な時間だったのだろう。
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