冷血心臓外科医はお飾り妻を逃がさない~愛なき契約から始まる甘く暴かれる独占婚~
 困惑していると三神さんが口火を切る。

「元々仕事として、俺が食べて寝るまでそばにいるつもりだったんだろ?」

 からかいを含んだような言い方で、とっさに理解できなかった。けれどすぐに思い出す。

『三神さんが食べて寝るまでそばにいましょうか?』

 ここに来た当初、あまりにも取り付く島もない三神さんに私が言い放ったものだ。あのときは本気だった。必要なら仕事だと割り切ってできた。

 でも今、同じようにできるのかと言われたら、二つ返事はできない。

 どうして?

 混乱しつつ負けじと言い返す。

「お節介は、迷惑だっておっしゃっていたじゃないですか」

『お節介は、ただの迷惑でしかないな』

 あのとき、すげなく返した彼の言葉をそのまま返す。

「今はお節介とは思っていない」

 なにかしら棘のある返答があると思っていたのに、彼はあっさりと答えた。

 さっきから三神さんの発言に、感情が揺すぶられてばかりいる。心臓が強く打ちつけ、胸が苦しい。

「……恋人がいるなら強くは勧めないが」

 黙っている私に三神さんが声をかけてきたので、弾かれたように答える。

「そんな相手はいません」

 いるなら、それを理由に真っ先に断っている。嘘でもそう伝えたらよかったのか、と逆に今になって思った。

 まったく浮かばなかったのは、情けないことに誰とも付き合った経験がないからだ。

 そこで考えが切り替わる。私よりも彼だ。

「三神さんこそ、大丈夫ですか? 親しくされている女性とか――」

「いたら提案はしていない」

 即座に返して、質問した私がなんだか滑稽だ。
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