ポリスラインを翔びこえて
蜂技は強張らせた肩の力を抜いて再び分厚い唇を開く。
「女の名は烏魔美琴。彼女はこの上なく美しい女性で、まさに魔性の女の代名詞でした。その美貌に惚れなかった男はいません──たった一人、炎真信を除いては」
「……」
「美琴は自分に媚びない真信に特別な感情を持ち始め、あろうことか恋心を抱いたのです。決して許されない関係だとわかっていながらも真信も次第に惹かれていき、ついに……子を授かった」
「……これ、炎真信とその子ども?」
「っ!そうです、それをどこで、」
「ははっ、そーゆーことね」
きみの声が蘇る。
──『ほんとうの父親をみつけたんだ。それからね、ほんとうの母親も、みつけたんだよ』
──『でももうこの世にいない』
──『私、生まれてこなければよかった』
写真に写る娘は笑顔で父親を見つめ、父親もまた、やさしい眼差しで娘を見つめている。
もうこの世にはいない。
けれど、確かにそこには、愛が灯っている。