ポリスラインを翔びこえて
Epilogue
*
天は青く、高く、清々しい。
陽は白く、大きく、まぶしい。
とある高台の私有地の墓地から見下ろすのは、かつて彼が支配した街。
完璧に手入れされた白い大理石に触れると指先からひんやりとした冷たさが伝う。
“炎 真信”
その名へ花を手向けると、私のとなりできみも煙草に火をつけて静かに置く。
手を合わせて立ち上がり、大好きなきみと肩を並べて美しい街並みを眺める。
「ねえアオちゃん」
「蒼羽よ」
「俺たちは住む世界が違うよね」
「そうね。まるで正反対」
「俺はこの世界で、悪として生きるしかない」
「炎くんは悪じゃないわ」
「そうかな。違法な手段でしか満たせない需要が社会に存在する限り、それを供給する俺たちみたいな組織は利益を得て生き残るんだよ」
「……確かにそうかもね」
「俺たちが消えたところで、また別の誰かが穴を埋めるために入り込む。俺が生きているのはそんな世界」
「……うん」
「それなら俺たちのやり方で治安を維持して、組織のあり方や仕組みを保って、表社会との関わりも調整していく。そうやって俺はこっち側の世界で、俺の役割を果たして生きていくよ」
「ふふ、炎くんらしいわね」
「だからアオちゃんも、そっち側の世界できみの信じる正義を振りかざしていけばいい」
「うん。炎くんには極道の世界でしかできないことがあって、私には警察にしかできないことがあるのよね」
「そ。正反対だけど実質同じだよ」
やさしい炎くんならきっと、そっち側の世界でも誰かのために強さを行使して、誰かが救われるんだろうなと思った。