ポリスラインを翔びこえて
いつのまにかコース料理は終わっていて、ぞろぞろと部屋から去っていく家族たち。
ぽつんと個室に取り残された歌川くんと私。
ぜ、全然お寿司を味わえなかった……。
「昼下がり はずむ心で 馴れ初めや 出会えた奇跡 そっと抱きしめ」
「……え?」
「短歌はお好きですか」
「えっと…すみません、あんまり詳しくないです」
「三十一文字で自由に心を詠えます」
「自由に?」
「そうです。俳句のように季語を必ず入れる必要はありません。感じたこと、思ったことをそのままに表現できるのです」
自由に、感じたこと、思ったことを、そのままに。
なんていい言葉。
「なんだか素敵ですね」
「……真さんも詠みますか?」
先ほどまで無表情だった歌川くんは嬉しそうに私を見つめて筆と短冊を差し出している。
いや私は詳しくないんだって。
「えっと……」
受け取るべきなのか戸惑っていると、歌川くんは少し焦ってサッと引き戻す。