ポリスラインを翔びこえて
「いえ、ボクは真さんの雰囲気に惹かれてここに来たんです。昔好きだった人に似ていて」
「そうなんですね。すみません、中身は期待外れで」
「謝ることではありません。むしろボクの方が謝るべきです。過去に囚われてなかなか前に進めない人間なんです」
「過去…?」
「……いえ、今のは忘れてください。しょうもない話です」
「そ、そうですか」
そう言って歌川くんは手を離すとスマホを取り出してその場で腕を上げる。
何してるのかなと思って覗いてみると、画面の中には梅の花が写っていた。
シャッター音が何度か鳴ったあと彼は満足気に腕を下ろし、にっこり笑って私の方を向いた。
「おくれなば 梅も桜に 劣るらん 魁てこそ 色も香もあれ」
「……?」
「河上弥市が読んだ歌です。遅れをとってしまったならば梅は桜より見劣ってしまうだろう。何事も先駆けて行動してこそ、色も香りも愛されるのだ」
「えっと、つまり?」