意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
私たちはテレビ局から少し離れた、業界人があまり来ないカフェに入った。


「じゃあ、その推しの声優さんがいたってこと?」


オムライスを口に運ぶ手を止めて、桃美さんが聞いた。


「たぶん。でもその人、顔も名前も出してないんで本人かはわからないんです」

「ゲームの収録なんてうちでやるかな? 番宣?」

「あ…そうか」


興奮して失念していたが、確かになんで、乙女ゲームの声優がテレビ局にいるのか不思議に思った。


「他の番組のナレーションとかですかね」

「ああ、なるほど。それはあるかもね」


本当に本人なのだろうか。

ただ声が似ている人なのかもしれない。核心は持てない。


「もしかしたら、ただ似てる人かも…あ、でも『俺の声に聞き覚えがあるの?』って聞かれたんですよ。で、そのあと……」


『君が想像している人であってるよ』


思い出して顔が一気にかあっと熱くなった。


「ちょっと~? エレベーターで何されたのよ~おフェイスが真っ赤っかよ」


桃美さんがからかうように言った。


「なっ! 何もされてませんよ!」

「ほんとにぃ~?」

「本当です! 桃美さん、さっきから食べてないですよ」


桃美さんはオムライスをようやく口に入れた。

それでもすぐに飲み込んで「だってぇ~」と楽しそうに笑う。


「ところでなんてゲームなの? そんなに面白いなら私もやってみたいわ」

「え……」


私は固まった。

桃美さんは不思議そうに私の顔を見ていた。
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