全員片思い(※ただし全員両思い)~四角関係の正しい解き方を誰も知らない~

あとがき

本作をお読みいただき、本当にありがとうございました。
そして、咲良、冬馬、優樹菜、晴汰という4人の不器用すぎる恋模様を、最後まであたたかく見守ってくださったことに、心からの感謝を申し上げます。
この物語は、「もしも登場人物全員が両思いなのに、全員が『相手は自分の親友が好きだ』と本気で思い込んでいたらどうなるだろう?」という、ちょっとおバカで、けれど最高に切なくて尊いアイデアからスタートしました。
タイトルは『全員片思い(※ただし全員両思い)』。
この一見矛盾しているようなタイトルこそが、彼らの青春のすべてを物語っています。





1. 100個の「胸キュン」に込めたマジカルな仕掛け

今作の最大の挑戦は、何と言っても「100個の胸キュンシチュエーションをすべて盛り込む」というものでした。
朝の目覚めの「おはよ」から始まり、通学路での抱き枕状態での二度寝、学校での髪弄りや膝枕、放課後の家デートでのバックハグや恋人繋ぎ、テーマパークでの彼女宣言やコートの中への抱擁、そして夜の電話やつむじへのキス……。
少女漫画や恋愛小説で誰もが一度は夢見る「王道のキュンキュンシチュエーション」をこれでもかと全網羅させていただきました。
しかし、ただ甘いシーンを100個並べるだけではありません。
この物語には一つ、最高に贅沢で意地悪な「マジカルな仕掛け」が施されています。
それは、【受けている側が『これは親友が好きだから優しくしてくれているんだ』『本当の本命は別の人なんだ』と勘違いしている】というフィルターです。
普通の恋愛ドラマであれば、好きな人に手を握られたり、「世界一可愛い」「ずっと一緒にいよう」なんて言われたら、「えっ、もしかして私(俺)のこと好きなのかな!?」と期待しますよね。 ですが、この4人はあまりにも真面目で、お互いを大切に思いすぎていて、そして相手の魅力を爆発的に買っているがゆえに、真逆の解釈をしてしまいます。
•冬馬が咲良の膝に頭を乗せて「大好き」と言う ➔ 咲良:(晴汰くんに取られたくないって意味なのかな……切ない)
•晴汰が優樹菜をコートの中に招き入れる ➔ 優樹菜:(咲良と付き合う前の練習なのかな……ひどいよ)
•冬馬が咲良をナンパから守って「俺の彼女」と言う ➔ 咲良:(その場を収めるための優しい嘘なんだ……)
読者の皆様からすれば、「おいおいおい!! 100%本気だよ!! 全文ストレートな告白だよ!! 早く気づけ!!」と、壁を叩いて身悶えしたくなったのではないでしょうか(笑)。
この「読者だけが真実を知っていて、当事者たちだけが切ない顔をして甘いイベントをこなしている」というギャップこそが、胸キュン度を何倍にも跳ね上げるスパイスになっていれば幸いです。





2. 4人のキャラクターと、それぞれの「すれ違い」の心理

今回登場した4人は、本当に全員が良い子で、全員が優しすぎるんですよね。
だからこそ、この壮大なすれ違いが成立してしまいました。ここで改めて、4人の愛すべきキャラクターと心理について振り返ってみたいと思います。

咲良(さくら)
天真爛漫で、素直で、冬馬のことが大好きな女の子。けれど、保育園からの心友である優樹菜のことも同じくらい大切にしています。冬馬が時折見せる「自分だけに向けられる熱い視線」や「過保護なまでの優しさ」を、「冬馬くんは優樹菜が好きだから、その親友である私にも優しくしてくれるんだ」と変換してしまいました。咲良の切ない表情や、「優樹菜には勝てないよ」と諦めそうになる健気さは、書いている私もキュンと胸が痛くなりました。

冬馬(とうま)
普段はクールでカッコいいのに、咲良の前では感情が溢れ出してしまう男の子。咲良が好きすぎて、無意識に抱きしめたり、キスしたり、毎日のように「可愛い」「世界一好き」と伝えてしまいます。なのに、咲良が幼馴染の晴汰と楽しそうに話している姿を見るたびに、「咲良の本命は晴汰なんだ」と絶望していました。嫉妬で胸を痛めながらも、咲良の笑顔が見たい一心で甘やかし続けてしまう冬馬の重すぎる愛は、まさにこの物語の核でした。

優樹菜(ゆきな)
強がりだけど、実は誰よりも乙女で繊細な女の子。晴汰の強引な優しさや男らしさに長年ノックアウトされ続けています。晴汰が「今日も可愛いな」「ほら、手貸せ」とナチュラルに攻めてくるたびに心臓をバクバクさせていますが、「晴汰は咲良のことが好きで、私にはただの幼馴染として接してるんだ」と思い込んでいるため、自分の気持ちに必死で蓋をしていました。晴汰のコートの中に招き入れられた時のパニックぶりは最高に可愛かったですね。

晴汰(はるた)
不器用で男気溢れる、冬馬の幼馴染。優樹菜のことが好きで好きでたまらないのに、いざ本人を前にすると意地悪を言ったり、かと思えばおんぶしたり恋人繋ぎをしたりと、感情のブレーキが壊れていました。優樹菜が冬馬を頼りにしている姿を見て「優樹菜は冬馬が好きだ」と思い込み、一人で勝手に「失恋の傷」を深めていたのが愛おしいポイントです。

もし彼らのうち誰か一人でも「自分勝手」だったり「相手を疑う嫌な奴」だったりしたら、この四角関係はドロドロの悲劇になっていたでしょう。 「相手の幸せを第一に願うあまり、自分の想いを伝えられない」という優しすぎる4人だからこそ、どんなにすれ違っても不快感がなく、どこを切っても「尊い」という金太郎飴のような物語になりました。





3. クライマックス(第100のシチュエーション)について

物語のラスト、第100の胸キュンシーンは「夜の公園での告白と、答え合わせ」でした。
100個もの甘いシチュエーションを積み重ね、我慢の限界を迎えた冬馬が放った、「お前が晴汰を好きなのは知ってる。でも、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、こうやって手を繋いでいたいのは俺なんだよ!」という叫び。
ここからの怒涛の伏線回収(ただの答え合わせ)は、書いていて本当に楽しかったです。
「え? 私が晴汰くんを好き……!?」
「俺が好きなのは優樹菜だよ!!!」
「ええええええっ!??!?」
シリアスで切ない雰囲気が、たった一言で一気に崩れ去り、お互いの壮大な勘違いが判明した瞬間のあの大爆笑。
「今まで私たちが悩み、泣き、胸を痛めていたあの時間は何だったのーー!?」という、赤面と歓喜が混ざり合った結末は、彼ららしい最高のハッピーエンドになったと自負しています。





4. 4人の「その後」の妄想(ちょっぴりアフターストーリー)

無事に(?)全員が両思いであることが判明し、咲良と冬馬、優樹菜と晴汰という2組のバカップルが誕生したわけですが、彼らの「その後」についても少しだけ妄想を膨らませてみましょう。
勘違いが解けたあとの彼らは、間違いなくそれまで以上に拍車がかかった甘々生活を送っています。
何しろ、今までは「片思い(だと思っている)の遠慮」があった状態であれだけの胸キュンシチュエーション(100個)を連発していたのです。 遠慮というリミッターが解除された冬馬と晴汰の彼氏面は、もはや留まることを知りません。

•咲良と冬馬: 今までは「寝言で好きって言っちゃった」「ハートの卵焼き作っちゃった」と照れていた咲良ですが、正式に付き合ってからは冬馬が堂々と「咲良、ハグ」「咲良、あーん」と甘えてくるようになり、毎日顔を真っ赤にしています。冬馬は「昔は晴汰に嫉妬して死にそうだった」と素直に明かし、咲良を抱きしめては「もう絶対離さない」と囁いていることでしょう。

•優樹菜と晴汰: 今まで「幼馴染の戯れ」として片付けられていたおんぶや恋人繋ぎ、追いキスなどが、すべて「本気の彼氏のスキンシップ」へと昇華されました。優樹菜が「晴汰、近すぎる!」と真っ赤になると、晴汰は「だって俺たち、両思いだろ?」と意地悪く笑って逃がしてくれません。

そして何より、4人で集まった時の雰囲気が最高です。
「お前ら、よくもあんなにわかりやすく勘違いしてくれたな!」とお互いに黒歴史をほじくり返しては爆笑し、2組同時にダブルデートを楽しむ、そんな賑やかで幸せな未来が容易に目に浮かびます。






恋愛において、「すれ違い」というのは時に切なく、時に苦しいものです。
ですが、お互いがお互いを好きすぎるがゆえに起きるすれ違いは、世界で一番愛おしい時間なのかもしれません。
1から100まで、彼らの恋の軌跡を一緒に見守り、応援してくださり、本当にありがとうございました!
「尊すぎて胸が痛い!」「早く付き合っちゃえよ!」とジタバタしながら楽しんでいただけたなら、作者としてこれ以上の幸せはありません。
皆様の日常にも、咲良たちのようなあたたかくて甘い「尊さ」と笑顔がたくさん訪れますように。
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