桜雨
第五話 少しだけ笑った日
転校して三日目の朝。
教室の窓から差し込む春の日差しは、今日もやわらかかった。
「おはよう、千春」
教室へ入ると、萌恵が手を振る。
「お、おはよう」
「今日もええ天気やなぁ」
そう言って窓の外を見上げる萌恵につられ、私も空を見た。
雲ひとつない青空だった。
午前中の授業は、昨日より少しだけ落ち着いて受けることができた。
先生の話を聞きながらノートを取る。
分からないところは付箋を貼る。
少しずつ、この教室の時間にも慣れてきた。
昼休み。
「千春、お弁当一緒に食べよ」
萌恵に誘われ、中庭のベンチへ向かう。
桜は満開を少し過ぎ、花びらが風に舞っていた。
「珠代さんのご飯、美味しい?」
「うん」
「ええなぁ。つむぎのおばんざい、めっちゃ好きやねん」
萌恵は嬉しそうに笑う。
その笑顔につられ、私も少しだけ頬が緩んだ。
食べ終えた帰り道。
教室へ戻ろうと立ち上がった、その時だった。
「あっ」
足元の花びらで少し滑り、身体が前へ傾く。
「きゃっ」
慌てて体勢を立て直したものの、少しだけよろけてしまう。
それを見ていた萌恵が吹き出した。
「あはは、ごめんごめん!」
「もう……」
自分でもおかしくなってしまう。
ふっと笑いがこぼれた。
「あ……」
笑った。
そんな自分に少し驚く。
萌恵は嬉しそうに言う。
「千春、笑うとめっちゃかわいいやん」
「そ、そんなこと……ない!」
照れくさくなって目を逸らす。
廊下の向こうでは、和が友達と話していた。
ふとこちらを見て、目が合う。
一瞬だけ驚いたような表情をしたあと、小さく笑って会釈をした。
それだけで、また友達との話へ戻っていく。
その自然さが、どこか心地よかった。
放課後。
帰り支度をしながら窓の外を見る。
春風が桜を揺らしている。
今日一日を思い返す。
転びそうになったこと。
萌恵が笑ったこと。
私も笑ってしまったこと。
ほんの小さな出来事だった。
でも、その小さな出来事が、少しだけ心を軽くしてくれた。
教室を出ると、廊下の窓から夕暮れの光が差し込んでいた。
その光は昨日より、少しだけ温かく感じられた。
教室の窓から差し込む春の日差しは、今日もやわらかかった。
「おはよう、千春」
教室へ入ると、萌恵が手を振る。
「お、おはよう」
「今日もええ天気やなぁ」
そう言って窓の外を見上げる萌恵につられ、私も空を見た。
雲ひとつない青空だった。
午前中の授業は、昨日より少しだけ落ち着いて受けることができた。
先生の話を聞きながらノートを取る。
分からないところは付箋を貼る。
少しずつ、この教室の時間にも慣れてきた。
昼休み。
「千春、お弁当一緒に食べよ」
萌恵に誘われ、中庭のベンチへ向かう。
桜は満開を少し過ぎ、花びらが風に舞っていた。
「珠代さんのご飯、美味しい?」
「うん」
「ええなぁ。つむぎのおばんざい、めっちゃ好きやねん」
萌恵は嬉しそうに笑う。
その笑顔につられ、私も少しだけ頬が緩んだ。
食べ終えた帰り道。
教室へ戻ろうと立ち上がった、その時だった。
「あっ」
足元の花びらで少し滑り、身体が前へ傾く。
「きゃっ」
慌てて体勢を立て直したものの、少しだけよろけてしまう。
それを見ていた萌恵が吹き出した。
「あはは、ごめんごめん!」
「もう……」
自分でもおかしくなってしまう。
ふっと笑いがこぼれた。
「あ……」
笑った。
そんな自分に少し驚く。
萌恵は嬉しそうに言う。
「千春、笑うとめっちゃかわいいやん」
「そ、そんなこと……ない!」
照れくさくなって目を逸らす。
廊下の向こうでは、和が友達と話していた。
ふとこちらを見て、目が合う。
一瞬だけ驚いたような表情をしたあと、小さく笑って会釈をした。
それだけで、また友達との話へ戻っていく。
その自然さが、どこか心地よかった。
放課後。
帰り支度をしながら窓の外を見る。
春風が桜を揺らしている。
今日一日を思い返す。
転びそうになったこと。
萌恵が笑ったこと。
私も笑ってしまったこと。
ほんの小さな出来事だった。
でも、その小さな出来事が、少しだけ心を軽くしてくれた。
教室を出ると、廊下の窓から夕暮れの光が差し込んでいた。
その光は昨日より、少しだけ温かく感じられた。