異世界で私を殺した最強魔術師、現代では限界OLの私を溺愛する最強主夫になってる!?
1 前世の断罪
帰宅したら、ゴミ屋敷だった六畳一間が王宮になっていた。
しかも前世で私を処刑した男が、エプロンをつけてルンバにビビっている。
……いや、順を追って説明させてほしい。全ての始まりはあの時の記憶から始まる。
§ § §
私はこれから、世界で一番愛した男の手で殺される。
千塔の国アルヴァリウス王国、王都の中央広場。冷たい雨の中、何万という群衆の憎悪が、断頭台の私一人へ注がれていた。
聖女暗殺未遂、及び国家反逆罪。
それが、ハーゲン公爵家令嬢カレンシュとしての私に着せられた罪。
今ではすっかり悪役。そう、いってしまえば悪役令嬢として国にも国民にも公式認定されている。
――まあ、実際には無実なのだけれど。
本当に何故こんなことになったんだろう?
王国の財政管理と外交補佐を担う名門ハーゲン家の後継ぎとして、私はただ、国のために働いてきた。
神託で聖女に選ばれながら実務を知らぬ気弱な少女を、政治の毒牙から守るために庇い続けてきた。
王家・聖教会・宮廷魔術院という三つの権力が均衡を保てるよう、馬鹿みたいに身を粉にして立ち回ってきた。
その結果が、「邪魔な公爵家を潰したい」という権力者たちの思惑によって作り上げられた、完璧な冤罪のシナリオだった。
「魔女め! 聖女様を傷つけようとした大罪人!」
「さっさと死ね、この国から消えろ!」
飛んでくる石や腐った野菜が、かつて美しく結い上げられていた金色の髪に叩きつけられる。
両手両足に重い魔封じの枷をつけられたまま、冷たい石造りの断頭台に引き立てられた私は、群衆を前にしてなお、背だけは真っ直ぐに伸ばしていた。
雨は氷のように冷たく、薄い囚人服はとっくに肌まで濡れている。それでも、震えてやるものか。最後に民衆の記憶へ残るハーゲンの娘が、濡れ鼠で俯いた女であってたまるか。
罵声など、どうでもよかった。
屈辱も、悔しさも、死の恐怖も、今の私の心の中ではひどく遠かった。
ただ一つ。
たった一つだけが、私の心の核を、抉り続けていた。
断頭台のすぐ傍ら。
処刑の執行人として立つ、一人の男の存在が。
銀糸のように輝く長髪。
日光の下でさえ、周囲の空気を数度冷やすかのような、絶対零度の冷気を帯びた佇まい。
冷酷なまでに整った、まるで神が機嫌の良い日にだけ作り上げるような、完璧すぎる顔。
筆頭宮廷魔術師、エリオット・ヴァン・クリフォード。
王国最強の魔法使いにして、私が心の底から愛し、世界で一番信じていた、ただ一人の男。
彼が法廷で偽証した。
私が聖女を殺そうとした、と。
彼の言葉は、宮廷で最も重い。百の証言よりも、彼の一言が裁判を決定づけた。
……なぜ?
震えそうになる声を必死に抑えて、私は彼の顔を見る。
あの瞳を、見る。
かつて宮廷で、夜を徹して書類を共に読み込んだ。
「君の分析は正確だ」と、珍しく口元を緩めて言ってくれた。
凍えた指先に、黙って自分の手袋を差し出してくれた冬の夜もあった。礼を言うと、「効率の問題だ」と顔を背けた。その耳が少し赤かったのを、覚えている。
そんな彼の、大きな手の温度を、私はまだ覚えている。
平民出身でありながら、その類稀なる才能で筆頭宮廷魔術師にまで上り詰めた彼を、私は尊敬していた。
そんな彼が、私を愛してくれていると信じていた。
なのに今、眼前にある瞳は完全に凪いでいた。
感情の色が何一つない。まるで磨き上げられた鉄鋼のように、ただ冷たく、ただ無機質に、私を映しているだけ。
「なぜ、エリオット……?」
血を吐くような問いかけに、彼は一瞬だけ、瞳の奥で何か揺れた気がした。
気がした、だけだ。
――裏切り者! 声にならない声が私の胸の内で満ちる。
一瞬、彼と視線が交わる。
だが、次の瞬間にはもう、ゆっくりと右手を掲げ、呪文を紡いでいた。
「断罪の雷(パニッシュメント・レイ)」
光。
世界が、白く弾けた。
鼓膜を突き破る爆音。全身を内側から灼き尽くすような激痛。
意識が、溶けるように遠ざかっていく。
――もし生まれ変わるなら。
――もう、絶対に。
――顔の良い男なんて、二度と愛さない。
――誰にも頼らず、自分の力だけで、たくましく気高く生きてやる、と。
痛みの向こうで、誓いだけが輪郭を保っていた。
国のために生きた。人のために働いた。男を信じた。その結果がこの断頭台なら、次の人生に持っていくものは決まっている。
消えゆく意識の中で、私は彼の氷の瞳を正面から見据えながら魂の底に刻みつけた。
§ § §
……目が覚めたら、夜の路地裏だった。
え? なんで? 私生きてる?
魔法で処刑されたはずなのに?
見慣れない質感の地面は冷たく、自分の体は信じられないほど小さく、手足がまるで言うことをきかない。
これ、赤ん坊の体だ……。
――って、まさか生まれ変わってるの?
視界の端に、若い女の背中が映った。
「ごめんね……私じゃ、育てられない……」
ぱた、ぱた、と雨音に混じって靴音が遠ざかり、やがて消えた。
(ちょっっっっ待って!!)
処刑台で一人でたくましく生きると誓ったのは確かだけれど!!
自力で立つことすら不可能な段階からのスタートは、さすがに想定外すぎる!!
「おぎゃあああっ! おぎゃあああああっ!!」
前世の全てとともに誓いとイケメンアレルギーだけを胸に抱いた私の、波乱万丈な現世の幕開けだった。
§ § §
「はぁ…………疲れ、た……」
死ぬほど重い足を引きずり、私は錆びついたアパートのドアを開けた。
時刻は深夜一時。外は生憎のどしゃ降りで、ビニール傘から滴る雨滴がコンクリートの土間に嫌なシミを作った。
都内の某大手商社で働く、社畜OLの私、如月奈々二十八歳。海外取引先との交渉・契約実務を担当し、深夜の国際電話と英文メールに追われる日々だ。
前世の報いか、今生では親に捨てられ、天涯孤独で生きてきた。
どこか前世のカレンシュを思わせる容姿のせいで、告白される相手には事欠かなかったが、恋が成就したことはまだ一度もない。
そう、例外なく私に告白してくるのはイケメンばかりだった。
そして私は前世の記憶を持っており、そのせいでイケメンアレルギーを発症してしまったのだ。
症状は本物だ。大学の頃、同期のイケメンに不意打ちで手を握られた時は、その場で腕に蕁麻疹が出た。満員電車で顔の整った男性と密着した時も、言い寄られた時も、同じだった。医者に相談したが「精神的なものでしょう」の一言で終わり、特効薬はないそうだ。
極めつけは新卒研修の時だ。班のリーダーだった爽やか系エースに「如月さんって頑張り屋だよね」と肩を叩かれた瞬間、首筋まで真っ赤に腫れて医務室送りになった。以来、社内で私は「重度の接触過敏の人」として丁重に距離を置かれている。ある意味、処世術としては完成している。
とにかく、近づかない・触らせない・目を合わせないを徹底してきた。
イケメンアレルギーのせいで男を徹底的に避け、誰にも頼らず一人でたくましく生きてきた……その最終形態が、これである。
「うわぁ……」
六畳一間の部屋へ足を踏み入れ、思わず自分で声が出た。
脱ぎ散らかした服、積み上がったコンビニ弁当のゴミ袋、いつから置きっぱなしなのかわからないペットボトルの群れ。
足の踏み場もない、完全なゴミ屋敷予備軍だ。
うん、まだ予備軍だよね、予備軍。
だってほら、少し床見えてるし!
ちなみに見えている床の面積は、畳半分くらい。玄関からベッドまでの獣道だけが、辛うじて文明を保っている。
――いや、違うの聞いて?
前世がアレだったでしょ? だから生活に関わる色々なことって面倒で!
だって令嬢だったときはお風呂までメイドに洗ってもらってたんだから!?
あの処刑場での気高い誓いはどこへやら。魔法が使えない現代日本で、貴族の財力もない私が一人で生き抜くのは、あまりにも過酷だった。
とはいえ、前世の知識や教養が随分と私を助けてくれたことは事実。
おかげで大学にも行けて、ブラックとは言え、ちゃんとした企業に就職も出来たし。
――でも。
「あーあ……どうして今生も、こんなにツラいんだろうな……」
お腹すいた。でも、お湯を沸かす気力すらない。
天井のシミを見つめながら、ぽろりと涙がこぼれた。
泣くつもりなんて、なかった。悲しいことがあったわけでもない。ただ、体のどこかの蛇口が緩んだみたいに、勝手にこぼれた。社畜六年目にもなると、涙と感情は別々に動くようになる。
このまま泥のように眠って、明日もまた満員電車に揺られて上司に怒鳴られるだけの人生なんだろうか。
目を閉じ、意識を手放しかけた、その時だった。
――カッ!!
「……えっ?」
閉じていたまぶたの裏まで灼き尽くすような、強烈な閃光。
飛び起きた私の視界に飛び込んできたのは、六畳一間のゴミ屋敷のド真ん中に浮かび上がる、見覚えのある極大の魔法陣だった。
「な、なに!? 魔法陣!? なんでこの世界で!?」
そう、この現代世界には魔法などない。
当然魔法陣が空中に浮かび上がることなどある筈もない。
私は突如空中に浮かび上がった魔法陣を呆然と見つめる。
その光の中から、何かが、あるいは誰かが現われようとしていた。
「え!? ええええーっ!?」
しかも前世で私を処刑した男が、エプロンをつけてルンバにビビっている。
……いや、順を追って説明させてほしい。全ての始まりはあの時の記憶から始まる。
§ § §
私はこれから、世界で一番愛した男の手で殺される。
千塔の国アルヴァリウス王国、王都の中央広場。冷たい雨の中、何万という群衆の憎悪が、断頭台の私一人へ注がれていた。
聖女暗殺未遂、及び国家反逆罪。
それが、ハーゲン公爵家令嬢カレンシュとしての私に着せられた罪。
今ではすっかり悪役。そう、いってしまえば悪役令嬢として国にも国民にも公式認定されている。
――まあ、実際には無実なのだけれど。
本当に何故こんなことになったんだろう?
王国の財政管理と外交補佐を担う名門ハーゲン家の後継ぎとして、私はただ、国のために働いてきた。
神託で聖女に選ばれながら実務を知らぬ気弱な少女を、政治の毒牙から守るために庇い続けてきた。
王家・聖教会・宮廷魔術院という三つの権力が均衡を保てるよう、馬鹿みたいに身を粉にして立ち回ってきた。
その結果が、「邪魔な公爵家を潰したい」という権力者たちの思惑によって作り上げられた、完璧な冤罪のシナリオだった。
「魔女め! 聖女様を傷つけようとした大罪人!」
「さっさと死ね、この国から消えろ!」
飛んでくる石や腐った野菜が、かつて美しく結い上げられていた金色の髪に叩きつけられる。
両手両足に重い魔封じの枷をつけられたまま、冷たい石造りの断頭台に引き立てられた私は、群衆を前にしてなお、背だけは真っ直ぐに伸ばしていた。
雨は氷のように冷たく、薄い囚人服はとっくに肌まで濡れている。それでも、震えてやるものか。最後に民衆の記憶へ残るハーゲンの娘が、濡れ鼠で俯いた女であってたまるか。
罵声など、どうでもよかった。
屈辱も、悔しさも、死の恐怖も、今の私の心の中ではひどく遠かった。
ただ一つ。
たった一つだけが、私の心の核を、抉り続けていた。
断頭台のすぐ傍ら。
処刑の執行人として立つ、一人の男の存在が。
銀糸のように輝く長髪。
日光の下でさえ、周囲の空気を数度冷やすかのような、絶対零度の冷気を帯びた佇まい。
冷酷なまでに整った、まるで神が機嫌の良い日にだけ作り上げるような、完璧すぎる顔。
筆頭宮廷魔術師、エリオット・ヴァン・クリフォード。
王国最強の魔法使いにして、私が心の底から愛し、世界で一番信じていた、ただ一人の男。
彼が法廷で偽証した。
私が聖女を殺そうとした、と。
彼の言葉は、宮廷で最も重い。百の証言よりも、彼の一言が裁判を決定づけた。
……なぜ?
震えそうになる声を必死に抑えて、私は彼の顔を見る。
あの瞳を、見る。
かつて宮廷で、夜を徹して書類を共に読み込んだ。
「君の分析は正確だ」と、珍しく口元を緩めて言ってくれた。
凍えた指先に、黙って自分の手袋を差し出してくれた冬の夜もあった。礼を言うと、「効率の問題だ」と顔を背けた。その耳が少し赤かったのを、覚えている。
そんな彼の、大きな手の温度を、私はまだ覚えている。
平民出身でありながら、その類稀なる才能で筆頭宮廷魔術師にまで上り詰めた彼を、私は尊敬していた。
そんな彼が、私を愛してくれていると信じていた。
なのに今、眼前にある瞳は完全に凪いでいた。
感情の色が何一つない。まるで磨き上げられた鉄鋼のように、ただ冷たく、ただ無機質に、私を映しているだけ。
「なぜ、エリオット……?」
血を吐くような問いかけに、彼は一瞬だけ、瞳の奥で何か揺れた気がした。
気がした、だけだ。
――裏切り者! 声にならない声が私の胸の内で満ちる。
一瞬、彼と視線が交わる。
だが、次の瞬間にはもう、ゆっくりと右手を掲げ、呪文を紡いでいた。
「断罪の雷(パニッシュメント・レイ)」
光。
世界が、白く弾けた。
鼓膜を突き破る爆音。全身を内側から灼き尽くすような激痛。
意識が、溶けるように遠ざかっていく。
――もし生まれ変わるなら。
――もう、絶対に。
――顔の良い男なんて、二度と愛さない。
――誰にも頼らず、自分の力だけで、たくましく気高く生きてやる、と。
痛みの向こうで、誓いだけが輪郭を保っていた。
国のために生きた。人のために働いた。男を信じた。その結果がこの断頭台なら、次の人生に持っていくものは決まっている。
消えゆく意識の中で、私は彼の氷の瞳を正面から見据えながら魂の底に刻みつけた。
§ § §
……目が覚めたら、夜の路地裏だった。
え? なんで? 私生きてる?
魔法で処刑されたはずなのに?
見慣れない質感の地面は冷たく、自分の体は信じられないほど小さく、手足がまるで言うことをきかない。
これ、赤ん坊の体だ……。
――って、まさか生まれ変わってるの?
視界の端に、若い女の背中が映った。
「ごめんね……私じゃ、育てられない……」
ぱた、ぱた、と雨音に混じって靴音が遠ざかり、やがて消えた。
(ちょっっっっ待って!!)
処刑台で一人でたくましく生きると誓ったのは確かだけれど!!
自力で立つことすら不可能な段階からのスタートは、さすがに想定外すぎる!!
「おぎゃあああっ! おぎゃあああああっ!!」
前世の全てとともに誓いとイケメンアレルギーだけを胸に抱いた私の、波乱万丈な現世の幕開けだった。
§ § §
「はぁ…………疲れ、た……」
死ぬほど重い足を引きずり、私は錆びついたアパートのドアを開けた。
時刻は深夜一時。外は生憎のどしゃ降りで、ビニール傘から滴る雨滴がコンクリートの土間に嫌なシミを作った。
都内の某大手商社で働く、社畜OLの私、如月奈々二十八歳。海外取引先との交渉・契約実務を担当し、深夜の国際電話と英文メールに追われる日々だ。
前世の報いか、今生では親に捨てられ、天涯孤独で生きてきた。
どこか前世のカレンシュを思わせる容姿のせいで、告白される相手には事欠かなかったが、恋が成就したことはまだ一度もない。
そう、例外なく私に告白してくるのはイケメンばかりだった。
そして私は前世の記憶を持っており、そのせいでイケメンアレルギーを発症してしまったのだ。
症状は本物だ。大学の頃、同期のイケメンに不意打ちで手を握られた時は、その場で腕に蕁麻疹が出た。満員電車で顔の整った男性と密着した時も、言い寄られた時も、同じだった。医者に相談したが「精神的なものでしょう」の一言で終わり、特効薬はないそうだ。
極めつけは新卒研修の時だ。班のリーダーだった爽やか系エースに「如月さんって頑張り屋だよね」と肩を叩かれた瞬間、首筋まで真っ赤に腫れて医務室送りになった。以来、社内で私は「重度の接触過敏の人」として丁重に距離を置かれている。ある意味、処世術としては完成している。
とにかく、近づかない・触らせない・目を合わせないを徹底してきた。
イケメンアレルギーのせいで男を徹底的に避け、誰にも頼らず一人でたくましく生きてきた……その最終形態が、これである。
「うわぁ……」
六畳一間の部屋へ足を踏み入れ、思わず自分で声が出た。
脱ぎ散らかした服、積み上がったコンビニ弁当のゴミ袋、いつから置きっぱなしなのかわからないペットボトルの群れ。
足の踏み場もない、完全なゴミ屋敷予備軍だ。
うん、まだ予備軍だよね、予備軍。
だってほら、少し床見えてるし!
ちなみに見えている床の面積は、畳半分くらい。玄関からベッドまでの獣道だけが、辛うじて文明を保っている。
――いや、違うの聞いて?
前世がアレだったでしょ? だから生活に関わる色々なことって面倒で!
だって令嬢だったときはお風呂までメイドに洗ってもらってたんだから!?
あの処刑場での気高い誓いはどこへやら。魔法が使えない現代日本で、貴族の財力もない私が一人で生き抜くのは、あまりにも過酷だった。
とはいえ、前世の知識や教養が随分と私を助けてくれたことは事実。
おかげで大学にも行けて、ブラックとは言え、ちゃんとした企業に就職も出来たし。
――でも。
「あーあ……どうして今生も、こんなにツラいんだろうな……」
お腹すいた。でも、お湯を沸かす気力すらない。
天井のシミを見つめながら、ぽろりと涙がこぼれた。
泣くつもりなんて、なかった。悲しいことがあったわけでもない。ただ、体のどこかの蛇口が緩んだみたいに、勝手にこぼれた。社畜六年目にもなると、涙と感情は別々に動くようになる。
このまま泥のように眠って、明日もまた満員電車に揺られて上司に怒鳴られるだけの人生なんだろうか。
目を閉じ、意識を手放しかけた、その時だった。
――カッ!!
「……えっ?」
閉じていたまぶたの裏まで灼き尽くすような、強烈な閃光。
飛び起きた私の視界に飛び込んできたのは、六畳一間のゴミ屋敷のド真ん中に浮かび上がる、見覚えのある極大の魔法陣だった。
「な、なに!? 魔法陣!? なんでこの世界で!?」
そう、この現代世界には魔法などない。
当然魔法陣が空中に浮かび上がることなどある筈もない。
私は突如空中に浮かび上がった魔法陣を呆然と見つめる。
その光の中から、何かが、あるいは誰かが現われようとしていた。
「え!? ええええーっ!?」