『ちゃんと愛してたのに』
4 ◇妻は立ち続けた 

 私は突撃前にもホテルの外で待機して立ち続けた。
 突撃した時も部屋の中で立ち続けていた。

 悲しみと切なさに心の中はグチャグチャになりながら、向き合ってほしくて
何もちゃんと向き合わない夫に質問を繰り返した。

 付き合い始めた頃の甘酸っぱい気持ち……
プロポーズされた日の喜び……
結婚式で味わった無情の幸せ……
楽しいだけの新婚生活……

 ある日を境に、自分のことを見なくなった夫への失望……
そして喪失感と葛藤。

 私はずっとあなただけを見つめ、愛し尽くしてきたのに
あなたはどうして、隣にいるのが私だけでは満足できないのか?


 どうして気持ちを他に向けるのか?

 そんな想いを胸に抱え、苦しかった。

 立ち続けている私に、彼らは何も誠実に向き合おうとはしない。



 ホテルに突撃したけれど、ふたりののらりくらりとした態度に
拉致があかなかった。

 ふたりは逃げおおせたと思っているようだった。
 そうは問屋が卸すかいっ。

          ◇ ◇ ◇ ◇


 私はその日から家には帰らず、実家に帰った。
 そして、弁護士に相談をしていた通り、女の実家と夫の会社に
内容証明を送った。

 すぐに時間差でふたりから電話が入る。

「どうしていきなりこんなことするんだよ」

「だから、示談をするためにホテルまで行って話を聞かせろと言ったのに
一切のらりくらりと話をせずに逃げてたのはどちら様ですか?

 まず不貞関係での慰謝料請求させてもらいましたから宜しく。
 お金を支払ってもらえれば即時離婚するから」


「懲戒解雇されそうだよ」

「自業自得じゃない? 私があんなに反省を求めたのに一切の謝罪もなく
のらりくらり。解雇されちゃいなっ。じゃね。二度と私に関わらないでよね。

 あとは、弁護士を通すから。あなたの顔なんて、裏切者の顔なんて二度と見たくない」



「なんたらかんたら──」何やら夫が喚いていたけど私は電話を切った。
 そして女からも電話があったけれど、こちらの電話は一度も取らなかった。
 人を舐めてるからこういうことになるんだよっ。
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