触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

「……!?」

 不意に放たれたおねだり。
 なんとなく、何のことかわかった。

 前のビルからは時折、仕事を終えた大人たちが出てくるものの、街路樹の影に隠れたこのベンチの周りには、今だけは誰もいない。

 迷いながらもそっと頷くと。

 少しだけ身を乗り出した航は――控えめに、一度だけ唇を重ねた。


「…………」
「…………」

 離れたあとも、至近距離でお互いの視線は絡み合ったままだ。

 航は、恋人をこんなふうに見つめるんだ。

 初めて知る、まっすぐで甘い瞳。
 それに見つめられているだけで、自分の心音が耳の中で鳴り響き、ショートしそうになる。
 今、彼にどんな顔を見せているのかすらわからないくらいだった。

 十五年間生きてきて、最も心を揺さぶられた誕生日。
 そして、それまでの人生で、間違いなく最も幸せな一日だった。
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