触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
その宝物を大切にキュロットのポケットへしまうと、しゃがみ込んだ。
足元に落ちていた流木の枝を手に取ると、砂浜へ文字を書き始めた。
『洋』
俺の弟の名前だ。
「えっ、すごい」
小学一年生はまだ習わないはずの漢字に、目を丸くして褒めると、彼女は「へへ」と得意げに笑った。
「『ワタル』もかく! おてほん、みせて」
彼女から枝を受け取り、大きく『航』と書いてやった。
夏帆と出会った日――こうして自分の名前を教えた記憶が、潮の香りとともに蘇る。
俺が書いた『航』を、七海は真剣な瞳で見つめながら書き写そうとしていたけれど。
しばらく苦戦した末に、「うーん」と諦めてしまった。
たしかに、画数が多いためまだ少し難しいかもしれない。