触れられなくても、君がいい。
 ◇

 部屋に入って少し落ち着いた頃、控えめなノックとともに、女将さんがやってきた。

 お盆に乗せて運ばれてきたのは、冷たい緑茶と、涼しげなフルーツゼリー。

 年齢を尋ねられて答えると、女将さんは目を丸くした。
 ロビーで見かけたのは息子さんで、私と同じ中学一年生なのだという。
 宿を営むご両親の手伝いをしていたのだ。

 父が「てっきり、うちの娘より年上だと思った」と、驚きの声を上げる。
 女将さんは「最近怖いくらいに背が伸びて、合う服がなくなった」と、困ったように、けれどどこか嬉しそうに笑っていた。

 瑞々しいゼリーを口に運びながら、私も静かに驚いていた。
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