触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
八月に入った。
宿のロビーの大きな窓から見えるのは、刺すような強い日差しに焦がされる砂浜。
そして、どこまでも高く青い空の色を映す、海。
午前十時過ぎ。
最後のチェックアウトは、女性二人組だった。
「ビーチでは思いきり遊べたので、今日は観光しようかなと思っているんですけど。お勧め、ありますか?」
カウンターで手続きを終えると、そう尋ねられた。
「でしたら」
すぐ横に並べてあるハンドブックを一冊手に取り、開いて差し出した。
「この辺りは開国の歴史が残っているので、散策だけでもお楽しみいただけると思います」
指先で地図をなぞりながら、続ける。
「あとは、今日は天気がいいので。ロープウェイを使って山頂に登るのもお勧めです。港と海が一望できます」
「わあ! ありがとうございます」
受け取ったページに目を落とした客は、眉を下げた。
「素敵な場所がありすぎて、選べないですね。今年だけじゃなくて、また来たいです」
そう言ってもらい、微笑み返す。
「ぜひ。お待ちしています」