触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
『あっ、すぐ行く! ……航、ごめん。そういうわけなの……』
「あー、うん。わかった」
妻の仕事は忙しく、こうして急な予定変更に見舞われるのは、珍しいことではない。
『…………』
「また明日、着く時間がわかったら連絡して」
『宿も忙しくて大変なのに……ごめんね』
「いや。全然、気にしないで」
短いやり取りの末に、通話を切った。
無機質な電子音と、妻の声の余韻が、少しだけ耳の奥に残っていた。
電話は、見えないのに、聞こえてしまうものだ。
昔の自分を、思い出す。