触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 しばらくすると、騒がしかった教室はすっかり熱を失い、残っているのは私と小宮山だけになっていた。

 健康観察に関する活動報告は記入項目が細かく、思いのほか時間を食う。
 予備校まではまだ少し時間があるとはいえ、早く終わらせてしまいたい。

「まだ終わんないの?」

 自分の分を終えたらしい小宮山が、私の手元を覗き込んできた。

「……あとでまとめて提出しとくから、そこに置いといて。ちょっとお手洗い行ってくる」

 そう言い残し、書きかけのプリントを置いたまま教室を出た。

 廊下を歩きながら、ふと、航からの返事が来ているかもしれないと思い立つ。
 いつもスマートフォンを入れているスカートのポケットに手を入れるが、空を切った。

 ない。

 机の上に置きっぱなしにしてきたのだ。
 いくら学校の中とはいえ、無防備すぎたと焦る。

 足早に用を済ませ、小走りで教室に向かった。

 ドアを開けた瞬間。
 私を見た小宮山は、耳元に何かを当てたまま、飄々とした声で言った。

「……あー、戻ってきましたよ? 代わりますね」

 その手には――なぜか私のスマートフォンが握られている。
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