触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
『――本日の始発電車は、まもなく一番線に……』
冷え切った構内から、無機質なアナウンスが響いてくる。
触れられそうになった腕を慌てて引き、目を逸らして告げた。
「俺は……彼女が好きだから」
「…………」
「……じゃあな」
動かない葉月を残し、改札を通ったとき。
「……じゃあ、行ってもいいけどっ! 絶対に、しないでっ!!」
背中に叩きつけられた捨て台詞に、ギョッとして振り向く。
葉月はすでに背を向け、暗がりへと走り去っていくところだった。
「……なんなんだよ」
小さい頃から知っている彼女の、ひどく苦しそうな姿。
それにただただ、困惑した。
嫌な余韻を振り払うように、俺は電車へと乗り込んだ。