触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
「よくわかんないけど……俺、もう行くから」
掴まれた手を剥がし、歩き出そうとすると。
掠れた声で、すがられた。
「私のほうが……っ! もっとずっと前から、航のこと好きだったもん……!」
振り返って、息を呑む。
葉月は、我儘を言って泣きじゃくる子どものように、顔を歪めて大粒の涙をこぼしていた。
「え……彼氏いるんじゃなかったっけ」
「この前、別れたよ! なんでそんなに、私に興味ないの……」
「…………」
これまでの、葉月は。
やたらくっついてきながらも、そこに恥じらいなどは見せなかった。
明確な好意の言葉も、一度もなかった。
少しも無理していないような笑顔で「彼氏できたんだ〜」などと報告してくることもあった。
だから、俺は葉月にとって、単なる幼馴染なんだろうと思っていた。
「航って……今、幸せなの? いつも寂しそうに見えるよ……?」
震えた声で、問いかけられる。
そして、細い手が伸ばされた。
「私なら……いつもそばにいられるよ……?」
夏帆の笑顔が、頭をよぎった。