触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
クリスマスを翌週に控えた、土曜日。
「それじゃあ、行ってくるね」
きちんとした服装に身を包み、湊人の学習発表会のため学校へ向かう両親を、玄関で見送る。
戸を開けると、冬の冷たい風が吹き込んできた。
「はーい。いってらっしゃーい」
「……いってらっしゃい」
飄々としている凪沙をよそに、私は両親の目を見られなかった。
パタン、と扉が閉まる。
足音が遠ざかったのを確認した凪沙が、振り返って口を開いた。
「さてと。私も出かけよっと」
悪戯な視線をこちらに送ると、洗面所へ向かっていった。
「航くん来るの、あと三十分後くらいー?」
廊下の向こうから響いてくる声。
「あっ……うん」
昨晩は緊張でなかなか眠りにつくことができず、寝不足でふわふわとしている。
本当は駅まで迎えに行きたかったけれど、航を家に連れ込むところを近所の人に見られたら、両親に伝わってしまうかもしれない。
そのため、あらかじめ住所を共有し、一人で来てもらうことにした。
落ち着かない気持ちで、鏡の前に立つ。
悩みに悩んで選んだ、ベージュのシャツワンピース。
その裾を指先で摘みながら、前から後ろから何度も確認した。