触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

 陽炎の揺らめくアスファルトの向こう。

 駅の出入り口から、妻が姿を現した。
 すぐにこちらへ気づき、頬を緩ませながら小走りで近づいてくる。

 そして、助手席の扉を開けた。

「ただいまっ……」

 強い日差しを背に受けながら、柔らかい笑顔を見せる。

「……おかえり」

 素早く乗り込むと、パタン、と軽い音を立てて閉めた。

 荷物を足元に置き、シートベルトを締めるのを確認してから、静かに車を発進させた。


 ロータリーを抜けた頃、ぽつりとこぼされる。

「昨日……本当にごめんね」

 沈んだ声だ。
 仕事のトラブルで、帰ってこられなかったことだろう。

「大丈夫だって」

 前を向いたまま、短く答える。

 やがて信号に捕まり、車を停めた。
 何気なく助手席へ視線を向け、気づく。

「顔色、悪くない?」

「え? あー……残った仕事進めるために、電車でパソコン見てたから。酔ったかも」

「……無理すんなよ」

 そう声をかけると、彼女は微笑んだ。
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