触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

「え、マジ?」

「…………」

 信じられずに聞き返す。

 夏帆は恥じらいながらも口角を小さく上げ、ひときわ優しい微笑みで、たしかな肯定を伝えてくれた。

「……おいっ、早く足拭かないと! 身体冷えるだろ……!」

「真夏に足だけ水に入ったくらいじゃ、冷えないでしょ」

 ひたすら動揺する俺を見て、夏帆は呆れたように笑った。

 そして。


「じゃあ……家に戻ろっか」


 そう言って、幾度となく繋いできた手のひらを、俺に向かって差し出す。

 これからの二人の働き方など、いろいろなことが頭を巡ったけれど。
 まずは目の前にある手を、そっと取った。

 一気に熱くなった身体を冷ますように、大きく息を吸い込む。
 並んで歩き出し、再び空を仰いだ。

 半分だけの月は、まだ昼の光の中で頼りなく霞んでいたけれど。
 これから満ちていくのだと思うと、たまらなく愛おしく見える。
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