触れられなくても、君がいい。

「ひっつくなよ」

 航が面倒くさそうに腕を解こうとするが、彼女は気にも留めない。

「えー? いいじゃん」

 不満げに唇を尖らせている。
 冗談めかして笑っているけれど、彼女はまっすぐに航だけを見つめているようだった。

 航も、一応は「暑いって」と振り払おうとするけれど、はっきりとは拒絶しない。


 木々が日差しを遮り、急にひやりとした空気が肌を撫でた。


「あの子、いつもこうだから気にしないで」

 私の強張った様子に気づいたのか、隣にいた女の子が耳打ちしてきた。

「大山に、べったりなの」

『大山』は、航の苗字だ。

「……そうなんだ」

 いつも、こんな感じなんだ。

 引きつりそうになる頬に無理やり微笑みを貼り付けて、小さく頷いた。


 こっちの『普段の航』なんて。
 ちっとも知りたくなかった。
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