触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

 航の顔が、ゆっくりと傾けられる。
 そして、私の右の頬に――壊れ物に触れるような、ひどく優しい温度が、そっと落とされた。

「…………」
「…………」

 心臓が、喉から飛び出しそうだ。
 私はそのまま、石像のように固まってしまった。

 頬から離れた航は、私の肩に顔を埋めるようにして、もう一度ぎゅっと抱きしめてきた。

 重なった二つの心音は、波の音なんかではまったく隠すことができない。


 やがて、熱い身体が、すっと離される。


「……帰ろ」

「……え、あ、うん……」

 お互い、ぎこちなく歩き出す。
 潮風に煽られながら、前を歩くその背中を、ただ見つめていた。

 全身に残った熱が、いつまでも消えない。

 航は大嘘つきだ。
 全然、『おままごとみたいなもん』じゃ、なかった。
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