触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

 頭に、少しだけ上がった息遣いがかかる。
 躊躇いがちに回された腕には、徐々に男の子らしい熱と力強さが滲んでいった。

「……え? え、何?」

「夏帆も……試してよ」

「え?」

 言われた意味がわからず、首だけを動かして航を見上げる。
 信じられないほどの至近距離に、心臓が激しく騒ぎ出す。

 彼は、自分の頬を突き出していた。
 その仕草で――ようやく理解する。

「え!? いや……何言ってるの!?」

 その言動についていけない私は、猛烈に狼狽えるばかり。
 彼が『試して』と言っているのは、おそらく――さっき話していた『頬へのキス』のこと。

「試せばわかるじゃん」

「保育園生と中学生じゃ訳が違うし……『試す』とか意味がわからない!」

「いいから」

「……っ」

 航は頬を向けたまま一歩も引かない。
 ただただ混乱して固まっていると、航が薄く唇を開いた。

「じゃあ……俺がする」

「は!?」

 目を丸くして瞬きを繰り返す私を、静かに覗き込んでくる。

「いい?」

「……!?」

 いいわけないのに。
 拒む言葉が、出てこない。
< 82 / 242 >

この作品をシェア

pagetop