触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
宿泊客の夕食の時間帯を終え、俺は一人、宿から最も近いスーパーへと車を走らせた。
厨房で使う調味料のいくつかが、一気になくなりそうだったからだ。
必要最低限のものだけが置いてある、やや寂れた店だ。
暗い駐車場から中へ入ると、その強い照明に、一瞬目が眩んだ。
昔はこの時間になると客なんておらずガランとしていたものの、最近は周辺に貸別荘が増えたらしく、自分たちで食材を買い込んで調理するのだろう家族連れが何組かいた。
目的の買い物を手早く済ませると、また生ぬるい潮の香りが漂う外へ出た。
道路の向こうに広がる、夜のビーチに目をやる。
夏帆と並んで座り、カップラーメンを啜ったあのベンチは、老朽化のため数年前に撤去されてしまっていた。