触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
◇
過去の記憶に浸りながら微睡んでいた俺は、不意に頬へ落ちた柔らかい感触で、目を覚ました。
「あ、起きた」
視界に映るのは――予定より早く帰ってきた妻だった。
「……え?」
驚いて身体を起こす。
「ビックリした? 帰る前に電話したんだけど、出なかったから。洋くんに『部屋で寝てる』って聞いて、まだバスあったし、バスで帰ってきたよ」
ポケットからスマホを取り出して画面を見ると、時刻は二十一時。
たしかに、妻からの不在着信があった。
「……ごめん」
寝ぼけた頭でハッとして、慌てて枕元を確認する。
夏帆からの手紙やメモを、うっかり置きっ放しにしていないかと焦ったのだ。
本棚の奥に目をやり、密かに安堵の息を吐いた。
すべてあの缶ケースにしまい、妻の身長からは角度的に見えないであろう場所に隠せてあった。
妻がベッドの縁に腰掛けると、小さく軋む音が鳴った。
「洋くんがね、『最近お客さん多くて、兄貴疲れてそうだし、夜のフロント代わるよ』って言ってくれてたよ」
「え、マジか」
「優しい弟だねえ」
妻はにっこりと笑うと、俺の両腕を「よいしょ」と引っ張り上げた。
「じゃあ、私たちの部屋、行こ?」
今いる俺の部屋は、宿泊棟の横にある実家の一室で、自分たちの家は、隣の敷地に建てた別棟にあるのだ。
妻は嬉しそうに腕を絡め、俺を夜の廊下へと連れ出すのだった。
過去の記憶に浸りながら微睡んでいた俺は、不意に頬へ落ちた柔らかい感触で、目を覚ました。
「あ、起きた」
視界に映るのは――予定より早く帰ってきた妻だった。
「……え?」
驚いて身体を起こす。
「ビックリした? 帰る前に電話したんだけど、出なかったから。洋くんに『部屋で寝てる』って聞いて、まだバスあったし、バスで帰ってきたよ」
ポケットからスマホを取り出して画面を見ると、時刻は二十一時。
たしかに、妻からの不在着信があった。
「……ごめん」
寝ぼけた頭でハッとして、慌てて枕元を確認する。
夏帆からの手紙やメモを、うっかり置きっ放しにしていないかと焦ったのだ。
本棚の奥に目をやり、密かに安堵の息を吐いた。
すべてあの缶ケースにしまい、妻の身長からは角度的に見えないであろう場所に隠せてあった。
妻がベッドの縁に腰掛けると、小さく軋む音が鳴った。
「洋くんがね、『最近お客さん多くて、兄貴疲れてそうだし、夜のフロント代わるよ』って言ってくれてたよ」
「え、マジか」
「優しい弟だねえ」
妻はにっこりと笑うと、俺の両腕を「よいしょ」と引っ張り上げた。
「じゃあ、私たちの部屋、行こ?」
今いる俺の部屋は、宿泊棟の横にある実家の一室で、自分たちの家は、隣の敷地に建てた別棟にあるのだ。
妻は嬉しそうに腕を絡め、俺を夜の廊下へと連れ出すのだった。