触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
夏帆は、初めて会ったときから眩い存在だった。
誕生日にシーグラスを渡したとき、少し照れながらも嬉しさが溢れていた口元。
しっかりして見えるけれど、実はいろんな無理や我慢をしていそうなところ。
思いきり頬を緩める笑い方や、海で溺れそうになって『怖かった』と泣きじゃくる顔。
なぜか、それらはすべて俺にだけ見せてくれるものであるように感じ、愛おしかった。
まさか『好き』と言ってもらえるなんて、思ってもみなかった。
大人になって振り返ると、間違いなく俺も好きだった。
それでも、戸惑うあまり返した『好きとかよくわからない』も、あの頃の本音ではあったのだ。
華やかな東京で、進学校を目指して夜遅くまで机に向かう彼女。
一方で、潮風の吹く田舎街で素潜りとサッカーに明け暮れ、宿を継ぐ未来が決まっている俺。
夏の海で笑い合う瞬間だけは「同じ中学生」でいられるものの、その魔法は長くは続かない。
数日も経てば、彼女は帰ってしまう。
俺の手の届かない場所へ。
だから、蓋をしていたのに。
結局、感情は溢れ、星が瞬いていたあの夜、抱きしめてしまったのだけれど――。