触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
「夏帆ちゃんも、ついに受験生だけどさ。今年の夏休みも、例の海、行けそうなの?」
「……判定もギリギリだし。今年は無理だと思う」
「えっ。それじゃあ、航くんと会えないじゃん!」
グラスの冷たいお茶を一息に飲み干し、伏し目がちに「仕方ないよ」と呟く。
「まさか、お父さんかお母さんに『今年は我慢しなさい』とか言われて、あっさり引き下がったんじゃないの?」
ジト目で追求され、言葉に詰まる。
「…………よくわかったね」
凪沙は「もーっ」と大袈裟に息を吐いた。
「夏帆ちゃん、交渉がヘタすぎ。『じゃあ代わりに〇〇してね』とか、『〇〇なら嫌だ』くらいゴネないと。そうやって親に『この子を丸め込むのは骨が折れる』って思わせて、戦意を削いでおくのが基本でしょ」
アイスの棒をビシッとこちらへ突きつけながら、得意げに持論を展開する。
単なる甘え上手ではなく、頭の回転がすこぶる速い策略家の凪沙。
どんな手練手管を使ったのか、私が中学二年生になってようやく手に入れたスマートフォンも、彼女はすでにまんまと勝ち取っている。