触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
『東京の愛人』説
新年度を迎えた、四月。
三年生になってもクラス替えはなく、階だけが上がった見慣れた顔ぶれの教室。
「えっ!? 向こうが東京に来るのっ!?」
春特有のざわめきの中、友達の驚いた声が響き渡った。
数人の女の子たちが、自席に座る私を囲むようにして身を乗り出している。
「…………」
いまだに現実味が湧かずふんわりとした頭のまま、私は小さく頷いた。
先月。手紙の返事よりも先に、航から電話がかかってきた。
受話器越しに伝えられた言葉は、こうだった。
『今年の夏は……俺が東京に行っていい?』
ただ『え?』と素っ頓狂な声が漏れてしまった。
嬉しさと戸惑いが入り混じる中、激しく鳴る心臓を持て余しながら、こう絞り出した。
『うん……待ってる』