触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
「えーっ! それってついに、ついにってこと!?」
「なんだ〜。直接会って返事したいから、ずっと焦らしてたってことじゃん!」
完全に『ハッピーエンド確定』として、キャーキャーと黄色い声を上げ始める友達。
しかしその一方、当の私は、手放しで喜べずにいた。
たとえば、航の本当の返事は『やっぱり、ごめん』で。
さすがに半年以上も待たせて申し訳ないから、せめて直接会って振ろうとしている――とか。
こうやって、脳内で『最悪な想定リスト』を作成し、頑丈な予防線を何重にも張っていた。
期待値を極限まで下げることで、悲しい結末を迎えたときのショックを和らげたいのだ。
「ちょっと、夏帆。もっと喜びなよー?」
そんな私を、友達が肘でつつきながら、からかってくる。
「……来てくれるのは、もちろんすっごく嬉しいんだけどさ……」
「大丈夫だって! まあ、もし東京まで来て何にも言ってこなかったら、夏帆は『東京の愛人』確定だね」
冗談めかして放たれた刺激的な単語に、思わず肩を揺らす。
「アッ……『アイジン』!?」
「そうそう。地元に本命がいて、夏帆は夏の間だけ会う秘密の相手。みたいな」
「…………」
航にぴたりと身を寄せる葉月ちゃんのことが、頭によぎった。
私の引きつった顔を見た友達は「あ、ごめんごめん。冗談だよ?」とフォローを入れてくれたものの。
念のため、その『東京の愛人』説も、想定リストに追加しておくのだった。