恋を知らないきみへ
展示場へ着くと、平日にもかかわらず数組の家族連れが見学に来ていた。


受付で簡単な引き継ぎを済ませてフロアへ出ると、まだ小さな男の子を連れた若い夫婦が模型を眺めている。

男の子は四、五歳くらいだろうか。
大人の話には興味がないらしく、きょろきょろと辺りを見回していた。


「こんにちは。本日はご来場ありがとうございます」

明るく声をかけると、夫婦が振り返る。
ワクワクしたような顔をしたご主人に、少し緊張気味の奥様。

まだ若くて、三十代前半くらいの雰囲気のいい印象だった。

「営業担当の小関と申します」

「よろしくお願いします」

挨拶を交わしたあと、家づくりを考え始めた時期や希望エリアを聞きながら展示場を案内していく。


リビングへ移動した頃には、ご主人は断熱性能の話に夢中になり、奥様はキッチン収納を熱心に見始めていた。

家を建てるというのは、人生で一番大きな買い物だ。
当然みんな慎重になるし、そして思い描いていたマイホームへの憧れも溢れ出す。

そんなお客様の一瞬一瞬の表情が、私をいつも頑張らせてくれる。


両親がモデルハウスを回っている間、しばらくウロウロしていた男の子が退屈そうに床へしゃがみ込んだ。

私は自然とその子の目線までしゃがんで、顔を覗き込む。

「飽きちゃった?」

聞いてみると、彼はこくん、と小さくうなずく。


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