『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―
15 ◇夫、奥田貴史の不倫



 もし、夫の浮ついた気持ちがまだはじまったばかりで、そうそう相手に心まで
持っていかれていなければ──

少しお灸を据えれば自分の元へ帰ってくるのではないかと、私(文世)は考えた。


 それならば、怪しい気配を感じたのだから夫を泳がしたりせず、ここはいち早く
動いたほうがいいだろうと思う。

 それで、私は数社の探偵事務所をピックアップして、電話で相談という形で
話を聞かせてもらい、最終的に事務所まで出向くことにした。

 そして、"まつり探偵事務所"と看板を出しているところに依頼することに決めた。

 そんな風にして私は、直接動いてくれるスタッフや責任者とも会い、対面で
契約を済ませた。

 いろいろと調査前準備として事務所は、依頼者から──
今回なら私のことよね……
対象者の顔や体型、特徴などの把握をするらしい。

 そのため、対面から数日後、私は夫の写真を3枚ほど提供した。

 あとは、仕事が終わりフリーになる時間帯は何時頃なのかということや、
普段どのような交通手段を使ってどういうルートで移動しているのか、仕事が
終わりフリーになる時間帯は何時頃なのかなど、知り得ている全ての情報を提供した。

 事務所まで脚を運んだのは一度だけで、後は写真などもPCに取り込んで
メールでの遣り取りで全部済ませた。

 ただ、私からの提供は夫の分のみ。
 だって、まったく相手が誰なのか、私自身わからないのでどうしようもない。

 おそらく、夫から相手に辿り着くのではないかな。
 そう時間もかけず(かからず)にね。


 私の行動は月初めから始まり、結果を知った頃は、5月も終わりに近づき、季節は
いつのまにか初夏の気配を帯びていた。

 結果はまず最初にいち早くPDFで送られてきた。
 そして、そのあと封書で届けられた。

          

 私の期待とは裏腹に――――
残念なことに、ふたりの交際は今だ続けられているようなのだ。

 そして、もっと残念なのは、4年余りも前からふたりの不倫が続けられていたと
いう事実。


          ◇ ◇ ◇ ◇

 まだふたりの関係が続いていることを知った文世は……。

 今の文世は、学生の頃の大人しく振舞っていた女子学生ではない。
『ならぬものはならぬ』と、ビシッと裏切り者を成敗できる大人の女性へと
成長していた。

 そんな文世は、結果を知るとすぐに動いた。 





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