『胡蝶の夢』に囚われて ― 夢か現か幻か ―

2 ◇アプローチされる?   

「まぁまぁ、君の場合はサイコパスそのものではなくて……何て表現すれば
いいのかわからないから、ひとまずサイコパスという単語をつけてみただけだな、うん。

 そう──
カリスマ性があって人の心(感情)を読める能力があるように見えるんだよね。

 そして自分のために周囲の人たちを動かす能力に長けているとでもいうか。  
 所謂、ダークエンパスに近いのかも……」


 彼は自分を納得させるため、自分に向けて呟いた。


 その様子を見ていて、私はパパッと彼について頭の中に浮かんでくるものがあった。

 そう言えば、このモテモテ王子が私の知っている限り、2回生から4回生にかけて
ただの1人も彼女を連れて歩いている姿というものを見たこともなければ噂も聞いたことが
なかったということを。

 誰それから告白された、と言う話は枚挙にいとまがないくらい聞かされてきたが。


「それが理由?」

「えっ?」

「渋谷くんって1回生の時のことはどうだったのかわからないけど、私の
知る限り、同じゼミを受けるようになってこの3年、浮いた噂を聞いたこと
がないのはそれが理由なのかな、と思って」

「するどいなぁ。大体、そんなとこ。俺は隠れサイコパスだからさ、まず
普通のお嬢様な女子は恋人にして不幸にしちゃあいけないんだ」

「へぇ~、そうなんだ」

「むちゃくちゃ、冷静だな永堀さんって」

「そうでもないよ? 
 だってサイコパスだなんて言われて冷静でいられる人間なんているのかな」

「サイコパスってどんなイメージが湧く?」

「異常者で怖いひと……かな。
 あっ、じゃあ、私ってサイコパスじゃないから」

「うん、わかってる。わかってるし、だからと言ってわざとそんな風に表現
したわけじゃないんだけどね。
永堀(ながほり)さんって、あんまり男子にときめかないでしょ?」

「そうだね。言いにくいけど、精神的な不感症かもしれない」

「同性が好きな人なのかな、とも思って観察してきたけど女子に対しても
親しくはしていても、そういう感じではなさそうだしね」

「えっ、私、いつの間にか観察されてたんだ~。
 サイコパス渋谷(しぶや)に」

「「ははっ」」

「上手いこと言うね」

「そっか、俺の感じた違和感ってヤツは君の精神的不感症からきてたんだな。   
 ありがと。これですっきりと卒業していけそうだわ」

「ずっと、気になってたの?」

「それはもう、魚の小骨が喉に刺さっているようにね」

「でも……私と同様に、イケてるメンズ見てもアプローチしたり騒ぎ立て
たりしない女子は他にもいると思うけど。それなのにどうして……」




-950-

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❖ダークエンパス:

人の心(感情)を読める能力がある。
それを自分のためや悪用するため(共感の搾取)に使う人。

「共感の搾取」とは、相手の優しさ、同情心、あるいは「理解したい」という感情(共感力)を
悪用し、自己の利益や操作(マニピュレーション)のために利用する心理的な搾取行為です。
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