離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
初恋と従兄の報告
遥が真裕と初めて会ったのは、五歳のときだ。
彼と過ごした幼い日々は短いものだったが、今でも遥にとって大切な思い出として胸に仕舞われている。
遥は生まれてから五年間、母と二人きりで暮らしていた。その頃の母娘は世を忍ぶように生きていて、生活もあまり裕福ではなかった。そんなあるとき、母が病気にかかって入院したのが、真裕の家が経営する冬月総合病院だった。
その日、遥は入院した母にあげようと、病院の花壇に咲いていた青紫色の花をつもうとしていた。
五歳ともなれば、花壇の花をつんではいけないことくらい分かっている。それでも、母に早く治ってほしくて、そのために自分にできることが花を贈ることしか思いつかなくて、花壇の花に手を伸ばしたのだ。
しかし、遥の手が花を手折る直前、「ダメだよ」という少年の声がその動きを止めた。振り返ると、遥より何歳か年上に見える男の子がじっとこちらを見ていた。
「その花壇は病院の人が大切に手入れしてるものだから、勝手にとっちゃダメだよ」
彼の口調は穏やかに諭すものだったが、悪いことをしているという自覚のあった遥は急いで花壇から出た。
彼と過ごした幼い日々は短いものだったが、今でも遥にとって大切な思い出として胸に仕舞われている。
遥は生まれてから五年間、母と二人きりで暮らしていた。その頃の母娘は世を忍ぶように生きていて、生活もあまり裕福ではなかった。そんなあるとき、母が病気にかかって入院したのが、真裕の家が経営する冬月総合病院だった。
その日、遥は入院した母にあげようと、病院の花壇に咲いていた青紫色の花をつもうとしていた。
五歳ともなれば、花壇の花をつんではいけないことくらい分かっている。それでも、母に早く治ってほしくて、そのために自分にできることが花を贈ることしか思いつかなくて、花壇の花に手を伸ばしたのだ。
しかし、遥の手が花を手折る直前、「ダメだよ」という少年の声がその動きを止めた。振り返ると、遥より何歳か年上に見える男の子がじっとこちらを見ていた。
「その花壇は病院の人が大切に手入れしてるものだから、勝手にとっちゃダメだよ」
彼の口調は穏やかに諭すものだったが、悪いことをしているという自覚のあった遥は急いで花壇から出た。