離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 けれども、遥はなぜか胸がきゅっとして、笑顔を作るのが一拍遅れてしまう。

「……おめでとう、理人」
「ありがと」

 理人は嬉しそうに頷いたが、遥の表情を目にして眉を寄せる。

「……なあ。今の顔、全然お祝いの顔じゃないけど」
「え……?」

 遥は息を呑んで自身の頬に触れる。確かに顔の筋肉が強ばっている……かもしれない。

「そう……かな、ごめん」
「まあ、いいけどさ。――なんだよ、俺が結婚するの、寂しい?」

 それは場を和ませるための軽い冗談だったのだろうが、妙にしっくりと遥の胸に落ちた。

「そう、だね。私……寂しいのかも」

 こんなふうに感じてしまう理由は分かっている。

 冷たい父。冷たい家。そこで家族としての温もりを与えてくれたのは、理人だけだった。

 いや、あの家に限らずとも、遥にとってきちんと家族と呼べるのは彼だけだ。

 戸籍上の夫とは契約結婚で離婚が迫っていて、母方で唯一親交のあった祖母ももう……

 理人が一瞬真顔になる。それから、遥のそんな背景に思いを巡らせてしまったのだろう、もどかしそうに眉を歪ませ、目を伏せた。
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