離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
 理人が店員を呼んで手早く注文を済ませると、それからすぐに日本酒が供されて二人で乾杯する。

 お通しの小さな茶碗蒸しに箸を伸ばしつつ遥は口を開いた。

「仕事、今も忙しいの?」

 理人は遥の父の秘書をしている。議員秘書の仕事は長時間労働になりがちなうえに休日出勤も多くて、いつも大変そうだ。

「そうだな、叔父さんが忙しいと、こっちも。今は年度末も近いし」

 年度末というキーワードが冬月家での話を思い出させて、遥はつい箸の動きを止めてしまう。けれどすぐに思い直して「そうなの」と頷いた。

「あとは、個人的なことで少しバタバタしてて」
「個人的なこと?」

 遥が首を傾げると、理人は少し真面目な顔になった。

「俺、結婚する」
「……え?」
「入籍は少し先だけど、互いの親への挨拶は済ませた。だから、お前にもちゃんと報告しようと思って」

 どうやら彼の話したいこととはそれだったらしい。

 長らく交際している女性がいることは以前から聞いていた。まだ紹介してもらってはいないが、芯が強く、政治家の妻となってもやっていけそうな人だとは話の印象から感じていた。
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