離婚届を渡された契約妻ですが、罪を抱えたエリート外科医の愛が重すぎます
「……なんで泣くんだ」

 うんざりしたような言い方なのに、その声はどこか優しく響く。

 遥は涙でぐちゃぐちゃの顔をパジャマで拭おうとしたが、流れる涙はとめどなく、すぐに袖口はびしょ濡れになった。

「………………寂しくて」
「寂しい?」
「従兄が、結婚するって聞いて……それで……」

 そこまで言って、自分はなにを口にしているのだろうと思う。

 こんなことを訴えたいわけではなかった。こんなことは話の核心ではない。

 真裕の視線がすっと逸らされる。その横顔がどこか痛みをこらえているように見えて、なぜそんな顔をするのだろうと遥は胸の片隅で不思議に思った。

「……従兄が、好きだったのか」
「違います」

 遥は即答した。それくらいその問いは馬鹿げていた。

 真裕も妻の声音から自身の質問がいかに的外れだったかを察したのだろう、鼻白んだ顔をした。

「じゃあ、なんだ」

 問われて遥は考える。なぜ自分はここまで追い詰められたような心持ちになっているのだろう。

 理人の結婚は核心ではない。けれど、きっかけではあった。

「理人は私にとって……唯一頼れる肉親だったんです……」
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