眠れない夜は愛しい雛を抱いて


(はぁ、疲れた)

タクシーに揺られながら見た、手元の腕時計は23時を回ったところだ。

(雛子は日本酒は好きだろうか?)

酒好きの彼女だが、好んで飲むのはビールが多い。ついでチューハイ、ワインの順だ。まだ日本酒は飲んでいるところは見たことがない。

後部座席の横に置いている紙袋には先ほどの、接待で取引先から頂いた日本酒が入っている。

山形県産の日本酒『十五代』で、米の豊かな甘みとフルーティーな香りから人気の高いお酒だ。

今度、酒蔵と三日月製菓がコラボしてこの日本酒を使ったチョコレート製品の販売を企画していることもあり、試飲兼ねてと頂いたのだ。

(雛子はまだ起きてるだろうか)

俺は自宅マンションのエントランスに到着したタクシーの支払いを済ませると、すぐにエレベーターのボタンを押す。

上昇していくエレベーターの中でスマホを確認すると、10分ほど前に雛子からのメッセージが届いている。

──『お仕事お疲れ様、鷹哉さんが帰ってくるまで起きて待ってるね』

可愛い雛のスタンプに勝手に目尻が下がる。


雛子にプロポーズをしてから一ヶ月。

俺たちの交際は順調で、毎日が幸せでしかない。

(雛子と結婚したら、この幸せが一生続くのか)

とは言え、まだ結婚の日取りは決まっていない。そもそも、決まるかどうかもわからない。

ロスにいる祖父は結婚の報告に大喜びで、早く日取り決めて欲しいと言われているが、俺の父親が反対しているのだ。

(案の定だがな)
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