午前3時の記憶喪失
じゃあ、レンは毎日、私に忘れられていると知りながら、


付き合いたてのフリをして電話をかけていたの?


「君の家族はみんな、俺を責めて君から引き離した。だけど、俺は君を諦められなかった。……毎朝、俺のことを完全に忘れて目覚める君に、もう一度恋をしてもらうために、俺は毎日、君の部屋にノートを置きに行ったんだ」


レンの声が震えている


「昼間に会いに行ったら、君は俺を見て不審者だと思うだろう? だから、ノートを読んで『恋人がいる』と認識した夜の時間にしか、君に近づけなかったんだ。毎日、君に一から俺のことを教え込んで、毎晩、世界で一番幸せな恋人同士に戻る。それが、俺の犯した罪への我が儘なんだよ」


時計の針が、午前3時を指す。


私の脳が、今日の記憶を消去し始める時間が近づいてくる


「もうすぐ3時だね」


とレンは優しく笑った


「今日も俺を好きになってくれてありがとう。また明日、君のノートを書き換えに行くよ。何度忘れられても、俺は毎日、君に恋をするから」


愛しさと、切なさと、彼の歪なほどの深い執着に、私の目から涙が溢れ出す


記憶が薄れていく暗闇の中で、私は受話器に向かって、強く、強く叫んだ。


「レン! 明日、ノートを読んだ私は、また絶対にあなたに恋をするよ!」


――カチリ、と時計の音が響き、私の意識は真っ白な朝へと連れて行かれた



~fin~
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