隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 暫くして、寝室のドアが開いた。

 髪を纏め、初めて出会った時と同じままの結愛が姿を現した。


「門まで送るよ」

 羽琉矢は、引き留めそうになる気持ちを抑えて玄関を出た。

 木立に囲まれたアプローチを歩いていく。
 辺りには長い影が差し、オレンジ色の夕陽がひときわ大きく見える。陽が傾くにつれて気温が下がり、今は少し肌寒くなっていた。

 時折、木立の間を吹き抜けていく春先のひんやりとした風を受けながら、二人は寄り添うように歩を進めていた。
 けれど、お互い言葉はなく無言のまま、一分でも一秒でも長く一緒にいたくて、どちらかともなく歩みは遅くなる。別れを惜しむように、ゆっくり、ゆっくりと。

 やがて、それも終わりを告げる。

 長いアプローチに見えたが、気がつけばあっという間に門に着いてしまった。門扉は固く閉ざされていた。

「今度、会えるのは一週間後だね?」

 羽琉矢が念を押すように聞いた。

 瞳には名残惜しそうな色が浮かんでいる。結愛も同じだった。
 瞳で問いかける羽琉矢に、まだ帰りたくないと本音がポロリと零れそうになったが、自分の想いを振り払うように、

「はい。一週間後に」

 結愛は平静を装って、自分に言い聞かせるように首肯した。


 羽琉矢は何も言わず門扉に近づいた。

 もうすぐ門が開かれる。

 結愛は門扉が開放されるのを待っていた。

 スイッチを前にしていた羽琉矢は、何かを決意したように目を閉じると、気持ちを整える為に一つ深呼吸をして……振り向いた。

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