隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「わかりました」

 しっかりとした声だった。

 さっきまであんなに震えていたのに。

 泣きわめくか、泣いて縋るか、暴れるか。はたまた色仕掛けか。
 窮地に立たされた時にその人間が持つ本性が出るものだ。何度となく経験してきた光景だった。この娘はどんな本性を見せてくれるのだろう。期待して見ていたら、そのどれでもなかった。

 結愛は顔を上げ毅然とした態度で姿勢を伸ばした。

 その潔さがなお一層、羽琉矢の興味を引いた。

 どんな顏をして言ったんだろう。

 背中からは雰囲気は伝わっても、細かな表情までは分からない。肩口に手をかけると、自分の方へと振り向かせた。

 少し青ざめた顏。決意を込めたような思いつめた瞳、ぎゅっと引き結んだ唇。握られたこぶしは微かに震えている。
 不安で仕方ないだろうに、それを表に出すまいと感情を抑えているようだった。理性の方が勝っているらしい。
 健気だと思った。今まで知らなかった種類の女性。

 女は感情の生き物。感情まかせに泣き叫んでもらっても、醜悪なくらい取り乱し縋られても、この娘なら、それさえも可愛いと許してしまえるだろう。

 この娘が欲しい。

 羽琉矢はゆっくりと結愛を抱き寄せた。

 結愛は何が起こったのかわからなかった。

 これから警察へ行くというのに、何故抱きしめられているのだろう。

 この人は怒っているのではなかったの? 不法侵入したのに。
 なのに、どうしてこの人の腕は優しいんだろう。腕の中にくるまれて安心するんだろう。

 初めて抱く感情に戸惑いながら、羽琉矢の背中に腕を回した。結愛に抱きしめられた感触が伝わると、羽琉矢は腕に力を込めた。

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