隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
「羽琉矢さん、わたしは帰るの。会わないって言ったでしょう? 友達も無理だって言ったでしょう? それが答えなの。これ以上話すことなんてないから、ねっ、羽琉矢さん、わたしを帰して」

 結愛は聞き分けのない小さな子供に言い聞かせるように、一言、一言、かみ砕くように話した。

「ダメだよ。ちゃんと話をしよう。育った環境が違うって、そんな理由じゃ納得できないよ」

 掴んだ腕に再び羽琉矢の力がこもる。

 わかってくれない。

 話はどこまでも平行線のまま交わらない。どこで間違ったのだろうか?

「どうしてわたしなの? 羽琉矢さんにはもっと相応しい人がいるでしょう? 友達だっているでしょう? わたしのことは諦めて……」

 言い終わらないうちに突然、目の前が暗くなった、と思った時には羽琉矢の胸の中にいた。
 さっきまでの力まかせの抱擁ではなく、大事な宝物でも扱うように、そっと抱きしめられていた。

 不意に見せられた優しさに、それ以上言葉を紡ぐこともできず、かといって応えることもできず、抱きしめ返そうと伸ばした手は何度も空を彷徨い、迷った末におろした。

「好きなんだ、結愛。だから諦めてなんて、そんな悲しい事は言わないで。他に相応しい人がいるなんて、そんな残酷な事は言わないで。僕が好きなのは結愛、君なんだから」

 心が千切れるような告白に、結愛は衝撃のあまり固まってしまった。

 好き? 羽琉矢さんがわたしを?

 その瞬間、電流のような甘い痺れが全身を貫いた。

 体の奥に微かな熾火が灯る。ふわりと桃の香りが二人を纏う。

 わたしと同じ気持ちだったの? 
 嬉しいはずなのに。天にも昇るような幸福感に満たされるはずなのに。

 でも、わたしは……

 結愛は優しい腕の中に身を預けながら、深く目を瞑った。

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