隠れドS系御曹司は一目惚れで結ばれた彼女を溺愛して逃さない
 育った環境が違えば、価値観だって違うだろう。

 同じ世界に住む人間同士の方が、お互い理解しやすいということもあるかもしれないが。
 だからといって何でも分かり合えるというものでもない。どんな人間とだって歩み寄る努力は必要なのだ。

 家柄とかそんなものは関係ない。自分が気に入って好きになった女性ならば、何の問題はないのだ。それこそが羽琉矢の理想だった。

 そして見つけたのだ。理想通りの女性が目の前にいる。

 それなのに……

 家柄や学歴や相手の背景を見て恋人を選んだりしないのはわかる。素性も何も知らない自分に好きだと告白してくれる人だ。
 大企業の御曹司が感情だけで行動していいのかって思うくらい、真っ直ぐに気持ちを向けてくれる。
 嬉しくないと言えば嘘になる。だが、それ以上に羽琉矢の置かれた立場を憂慮してしまうのだ。 

 分不相応、この言葉が脳裏をよぎった。

「それに、羽琉矢さんのこと、何とも思って……な……い、から」

 語尾は途切れて言葉になっていなかった。それでも羽琉矢は言葉を拾ってくれた。

「僕のこと何とも思ってないの? それが理由?」

 結愛は後ろめたさを隠して、こくりと頷いた。

「それは本心?」

 グッと距離を縮められて、向けられたのは疑いの眼差し。

 まだ、納得してくれないの? 

「わたし……羽琉矢さんのこと、嫌いだから」

 目はそらせない。ぎゅっと手を握りしめてぶつかる視線と対峙した。最後の手段だった。

 お願い、これで納得して。諦めて。

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