エリート社長の密かな純愛 〜身籠り初夜から始まる極上な甘い罠〜
ショックで立ち尽くす私に、給湯室の中からさらなる追い打ちが襲いかかる。
「あ! そういえば私、今朝会社に来る途中、社長がものすごい美人と歩いてるの見た! もしかして、あの人がその婚約者さんだったのかな……?」
「ええっ、本当!? じゃあもう、会社にも挨拶に来てるってこと?」
ドクン、と心臓が嫌な音を立てて波打った。
(今朝……? じゃあ今日は彗さん、会社に来てないってこと……?プライベートでその人と会っていたの……?)
────『じゃあ、明日な』
会社を休んでまでプライベートで会う相手なんか、もう決まってる。
(あぁ、やっぱり…………)
あの言葉が嘘だって、信じてた。
彼……彗さんの一番は私だって────信じて、いたかった。
だけど────。
その人はもう、私の知らないところで、彗さんのすぐ隣を歩いている。
私の知らない彗さんのことだって、たくさん知っているんだろう。
楽しげに笑い合う彼女たちの声が、遠くで酷く歪んで聞こえた。
──もう無理。
これ以上、一秒だって聞いていられない。
私はドアノブから力を失った手を離すと、涙が溢れそうになるのを必死で堪えながら、弾かれたようにその場から走り去っていた────……。
「────えっ?あっ、ちょ、森下さん……!?」
────後ろから聞こえた、慌てて私を呼び止める声にも、気が付かずに。