朝昼夜の三重人格な陛下と、第三王妃の聖女な薬師
 疑問が多すぎて何から質問すればいいのか分からない。ランナの困惑の表情を見て察したヒルは、気を取り直して明るい笑顔になった。

「改めて説明するよ。オレは昼の人格で、昼の12時から5時間だけ活動できる。他の時間帯の記憶はない」
「え、5時間だけ?」

 ヒルの説明によると、三人格それぞれが表に出る時間帯はだいたい決まっている。
 アサは朝4時から昼12時までの8時間、ヒルは昼12時から夕方5時までの5時間、ヨルは夕方5時から朝4時までの11時間。
 ヒルはまるで子供のように膨れながら愚痴をこぼす。

「どう考えても短いよな!? オレだけ活動時間が短いし魔力も弱いし、不公平だよな!」

 確かにヒルの時間が短いし、ヨルの時間が長すぎる。夕方も夜に含まれてしまうせいもある。
 そして三人格は記憶は共有していない。魔力の強さも違う。全くの別人が1つの体を共有している状態であった。
 細かい疑問は山ほどあるが、全てを質問していたら日が暮れてしまう。ランナは心を落ち着かせて、たった1つの質問に絞る。

「ねぇ……ヒル様は、何が目的なの?」

 ランナは自然とタメ口になっていた。三重人格、三人の王妃、指輪の呪い。全ての疑問をその質問に集約した。どこまで話すかはヒルに委ねる。
 ヒルが伏せていたに瞳を上げると、ランナの長い金髪と凛とした金色の瞳に意識を捉われる。
 部屋中に広がる金の装飾すら後光ではないかと思うほどにランナの色はヒルの視界と思考を染めて支配していく。
 ヒルは少し頬を赤く染めて視線をそらした。

「率直に言うと、オレ以外の人格を殺したい」
「人格を……殺す?」

 陽気なヒルの口から出たのは衝撃的な殺意の言葉で、思った以上に闇深い件だと感じ取れる。
 おそらく現状に不満なヒルは自分以外の人格を消して、ヒルという一人の人間として毎日24時間を生きたいのだろう。

「ランナちゃんは魔法薬を作れる薬師だろ? 人格を殺す薬も作れるよな?」
「ちょっと待って、そのために私を……?」

 ヒルとヨルが希少な能力を持つ聖女であるランナとポーラを娶ろうとした理由は、おそらく同じ。もしかしたらモニカも聖女かもしれない。
 聖女を呪いで支配して娶り、その能力を利用して他の人格を死に至らしめる。すなわち『人格の殺し合い』だ。
< 15 / 32 >

この作品をシェア

pagetop