世にも奇妙な買取屋

動物園

 休日になると、我が家では必ず動物園に行く。

 館内には、世界中から集められたさまざまな『家族』が展示されていた。

 仲の良い家族。

 毎日ケンカばかりする家族。

 父親がいない家族。

 祖父母と暮らす大家族。

 ガラス越しに眺めているだけなのに、一日いても飽きない。

 今日から新しい展示が始まるらしく、案内係が来場者へ丁寧に説明していた。

「こちらは『三人家族』です。最近、子どもが反抗期を迎えました。刺激を与えると警戒する恐れがありますので、ガラスは叩かないようお願いいたします」

 中では父親が新聞を読み、母親が夕食を作り、制服姿の子どもは不機嫌そうな顔でスマホをいじっていた。

 展示の横には観察ノートが置かれていて、来場者なら誰でも読むことができる。

【昨日、子どもが壁を殴って穴を開ける行動を確認。現在も興奮状態が続いているため、注意が必要】

「反抗期って、ずいぶん気性が荒くなるんだなぁ」

 そうつぶやきながら、次はお気に入りの『老夫婦』の展示に向かった。

 さっきの家族と違って、ここは穏やかだ。

 毎朝同じ時間に起きて、同じ椅子に座って、言葉を交わすこともなく、ちゃぶ台を挟んでゆっくりお茶を飲む。

 先週と代わり映えのしない老夫婦だけど、流れている空気が柔らかくて、見ているだけで心が和む。

「ねえ、父さん。来週もここに来ようね」

「はは、お前は本当にこの動物園が好きだな」

「うん。だって、こんなに近くで人間の家族の生態を観察できる場所なんて、今はここしかないでしょ?」


〈解説〉

♦️語り手が父親と訪れた動物園は、どうやら人間の家族を観察する場所だったようね。

♣️でも、人間の家族が展示されてるなんて普通じゃないよね?

♦️あら、広い意味で言えば人間も『ヒト』という種類の動物なのよ。でも、私たちが想像しているゾウやキリンなどの動物は一切いないみたい。

♣️最後に『人間の家族の生態を観察できる場所はここしかない』って言ってるけど、じゃあ、語り手は一体何者?

♦️少なくとも『ヒト』じゃないことは確かね!
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